年金って、本当に減っているの?
年金は減っている、と思っていませんか。
実は、上がっています。国民年金は1.9%、厚生年金は給料で決まる部分が2.0%の引上げです。
今日は、いくら上がったのか、それでもなぜ「減っている」と言われるのか、そしてパートの社会保険がこれからどう変わるのかを話します。
【テロップ】年金は減っている?/実は上がっている/社会保険も変わる
結論
先に結論です。年金は上がっています。国民年金は1.9%、厚生年金は給料で決まる部分が2.0%です。
ただし、前の年の物価は3.2%上がったので、物価には届いていません。つまり、実質では減っています。
払う方の保険料は、額も率も増えました。
パートの社会保険は、これから会社の人数の条件が下がっていきます。
【テロップ】年金は上がっている/実質は減っている/払う額も率も増えた
いくら上がった?
厚生労働省が発表した、今の年金額です。
国民年金は、満額の1人分で、月69,308円から70,608円へ。1,300円増えました。
厚生年金は、夫婦2人分の基礎年金を含む標準的な額で、月232,784円から237,279円へ。4,495円増えました。
厚生年金は、男性の平均的な収入(賞与込みで月45.5万円)で40年働いた場合の例です。2.0%は、給料で決まる部分の率です。自分の額とはちがいます。
【テロップ】国民年金 +1,300円/厚生年金 +4,495円/標準的な例の金額
いつから上がっている?
今年だけではありません。国民年金の満額を、5年前から並べます。
5年前は月65,075円。4年前は259円下がって、月64,816円でした。
そこから4年続けて増えて、今は月70,608円です。4年前より月5,792円多い。
厚生年金も、4年続けて増えています。
【テロップ】4年続けて増えた/月5,792円増/4年前は下がった
なぜ「減っている」と言われる?
では、なぜ「減っている」と言われるのか。物価の上がり分を除いた実質で見ると、減っているからです。
3年前は物価2.5%に年金2.2%。2年前は物価3.2%に年金2.7%。1年前は物価2.7%に年金1.9%。今は物価3.2%に年金1.9%。
金額は増えているのに、4年とも物価には届いていません。
4年分を合わせると、年金は8.9%、物価は12.1%上がった計算で、実質ではマイナス2.8%です。これはわたしの試算です。
ここでいう年金は国民年金の改定率、物価は改定に使う前の年の平均です。
【テロップ】実質は4年続けて減/年金+8.9%(試算)/物価+12.1%(試算)
買う力は、どれくらい?
国民年金の満額で、試しに計算してみます。これはわたしの試算です。
4年前の64,816円が物価と同じだけ増えていたら、月約72,700円でした。実際は70,608円。差は月に約2,100円、1年で約2.5万円です。
金額は増えたのに、同じ物を買おうとすると、少し足りなくなる。これが、実質で減っているということです。
【テロップ】もし物価と同じなら/差は月約2,100円/増えたのに足りない
長い目で見ると、どう?
もう1つ、長い目で見ます。国民年金の満額は、26年前が月67,017円でした。22年前は月66,208円、6年前は月65,141円。
4年前の64,816円は、26年前より月2,201円低い額です。2年前の68,000円で、26年前の額を超えました。
だから、最近増えていても、長く見てきた人には「減った」という印象が残っているのかもしれません。これもわたしの見方です。
【テロップ】26年前は67,017円/4年前は2,201円低い/2年前に超えた
なぜ、物価ほど上がらない?
理由は2つあります。
1つ目。前の年の物価は3.2%上がりましたが、年金の計算に使う賃金は2.1%でした。これは物価3.2%に、過去3年度の平均の実質賃金マイナス1.1%を足した数字です。物価の方が高い時は、賃金の2.1%を使う、と法律で決まっています。支える現役の人の負担に合わせるためです。
2つ目が、ここから少し引かれることです。国民年金で0.2%、厚生年金で0.1%です。厚生年金は、令和7年の改正で引く分が3分の1になっています。
だから、2.1%から引いて、国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%です。
【テロップ】物価3.2%賃金2.1%/賃金の方を使う/そこから少し引かれる
引く分は、何のため?
引かれる仕組みを、マクロ経済スライドと言います。年金を払う人の数の変化と、長生きする分に合わせて、上がり方を少し抑える仕組みです。20年以上前の改正で入りました。
これまでに、合計7回使われています。
国の説明では、将来の世代の年金の水準を守るためです。今の受給者には、物価に追いつかない形で出てきます。
【テロップ】上がり方を抑える仕組み/これまで7回/将来の世代の年金のため
払う額は、どうなった?
もらう額の次は、払う額です。自営業の人などが払う国民年金の保険料は、最初は月100円でした。当時と今では物価がまったくちがうので、金額だけでは比べられません。
近いところで見ると、26年前は月13,300円でした。今は月17,920円。月4,620円増えました。次の年度は月18,290円です。
26年で比べると、もらう額は5.4%増、払う額は34.7%増です。どちらも物価を調整しない金額のままで、わたしの計算です。
保険料が増えたのは、平成16年の改正で毎年引き上げ、平成29年度に上限に達したからです。今は賃金に合わせて改定されています。
【テロップ】最初は月100円/26年で月4,620円増/もらう額+5.4%/払う額+34.7%
払う率は、どうなった?
会社で働く人の厚生年金の保険料率は、22年前は13.58%でした。今は18.3%で、9年前から固定です。
月給30万円の人の本人の分で計算すると、月20,370円から月27,450円。月給が同じなら、月7,080円増えた計算です。
率は22年で34.8%増。国民年金の保険料も22年前から34.7%増で、ほぼ同じです。
(シャドが話す:率は止まったが、上乗せはある。子ども・子育て拠出金は0.36%で、会社だけが厚生年金と一緒に払う。2026年4月分(5月の給料から)は子ども・子育て支援金0.23%が健康保険に上乗せされ、本人と会社で半分ずつ。月給30万円なら本人は月345円ほど(わたしの計算)。出典:こども家庭庁・日本年金機構)
【テロップ】率は18.3%に上昇/9年前から固定/本人 月7,080円増
厚生年金の率、最初は?
今は18.3%。給料の2割近くです。では、一番最初はどのくらいだったのか。
始まりの1942年は6.4%でした。
途中で大きく下がった所が2つあります。1948年は、激しいインフレの時で、暫定の率として3.0%まで下がりました。2003年は、賞与にも保険料がかかるようになって、計算の土台が変わりました。率の数字は下がりましたが、負担が減ったわけではありません。だから、最初の6.4%と今の18.3%は、土台がちがう数字です。
ここでの率は、会社と本人を合わせた数字です。
【テロップ】最初は6.4%/今は18.3%/2003年に土台が変更
労使折半ってほんとう?
厚生年金の保険料は、労使折半です。会社とあなたで半分ずつ。月給30万円なら、あなたが27,450円、会社も27,450円です。
でも、それ、本当に会社が払っているのでしょうか。明細に出ない会社の分も、一部はあなたの給料から出ている可能性が高い。
法律で半分ずつと決まっていることと、実際に誰が負担しているかは、別の問題だと経済学では考えます。
【テロップ】労使折半の罠/会社分も27,450円/あなたが払ってない?
なぜ、給料から出る?
法政大学の酒井正教授の論文のたとえ話です。保険料がない時に、給料20万円で人を雇っている会社があるとします。
会社に2万円の保険料がかかると、雇う費用を20万円のままにするには、給料を18万円にすることになる。
全部が給料に移るのは特別な条件の時で、ふつうは一部です。ほかにも、賞与が会社も意識しないまま減る、福利厚生を減らす、雇う人を減らす、という形で調整されるかもしれません。
【テロップ】雇う費用は変わらない/給料18万+保険料2万/賞与や福利厚生にも
研究では、どれくらい?
52本の研究をまとめた論文では、英語圏と欧州大陸の国で、会社の分の約3分の2が給料に移っていました。北欧の国では9割近くです。
日本の研究は結果が分かれますが、総合するとゼロではないと見られています。健康保険料の研究では、多くが給料に移っているという結果もあります。
一方で、会社に聞くと「給料に移すことはない」という声が大半だったそうです。意識しない形で移っているのかもしれません。
【テロップ】52本の研究/約3分の2が給料へ/会社に聞くと違う答え
106万円の壁は、なくなった?
ここからは、年金を増やす側の話です。将来の年金を増やす方法の1つが、会社の厚生年金に入ることです。
パートやアルバイトの人が社会保険に入る条件のうち、「月額8.8万円以上」という賃金の条件がなくなりました。いわゆる106万円の壁の話です。
時給1,016円で週20時間働くと月8.8万円で、全都道府県の最低賃金がこれを超えました。つまり、最低賃金が上がって、この条件で外れる人がいなくなっていった、ということです。最低賃金の減額特例を受ける人は例外です。
残っている条件は、週の所定労働時間が20時間以上、学生でないこと、51人以上の会社で働いていること。2か月を超えて雇われる見込みも必要です。
家族の扶養の130万円の壁は別の話で、残っています。
【テロップ】壁はなくなった/もう超えていた/週20時間以上は対象
国は、対象者を増やしている?
年金は実質で減っています。その中で国がしているのが、厚生年金の対象者を増やすことです。今、対象は従業員が51人以上の会社です。
この人数は、段階的に下がります。1年後に36人以上、3年後に21人以上、6年後に11人以上、9年後に、10人以下の会社も対象になります。
国の試算では、見直し全体で新たに最大で約200万人が対象になります。内訳は、人数の条件をなくす分が約70万人、最低賃金の上昇と賃金の条件をなくす分が約110万人、個人事業所の業種の条件をなくす分が約20万人です。個人事業所の約20万人は、全部の事業所が対象になった場合の数字で、今ある事業所は当分の間、対象外です。現役の収入と比べた年金の水準(所得代替率)も、1.4%程度良くなる見込みです。
国の説明は、働く人にふさわしい保障を実現するためです。払う人が増えて、会社の負担も増えます。
会社の厚生年金に入れば、将来の年金は国民年金に上乗せされます。ここでいう人数は、法人全体の、厚生年金に入る対象の人の数です。小さな会社の経営者の人は、いつ自分の会社が対象になるかを見ておくとよさそうです。
【テロップ】新たに約200万人/払う人を増やす/9年後に10人以下も
自分は、何を確かめる?
ここからは、わたしの提案です。自分に合わせて考える材料にしてください。
もらっている人は、毎年届く通知で自分の額を確かめる。これからもらう人は、ねんきんネットで見込み額を見る。会社で働く人は、明細の厚生年金保険料を2倍して、会社の分まで含めた額を見る。パートで働く人は、週20時間の前後で、手取りと将来の年金の両方を見る。
物価に届かない分をどうするか。働く、稼ぐ力をつける、支出を見直す。答えは人によってちがいます。
【テロップ】自分の額を確かめる/厚生年金を2倍で見る/答えは人によってちがう
じゃあ、どうすればいい?
じゃあ、どうすればいいのか。ここからは、わたしの提案です。
わたしが提案しているのは、一家にひとつ、合同会社という未来です。
雇われて得る給料に加えて、家族やコミュニティの中に、自分で稼ぐ器をひとつ持つ。全員が経営者でなくていい。節税はおまけで、目的は、自分で決める自由です。
ひとつの選択肢として、考えてみてください。
【テロップ】一家にひとつ合同会社/自分で稼ぐ器を持つ/節税はおまけ
今日のまとめ
年金は上がっています。国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%。4年続けての増額です。
ただし、物価には届かず、実質は4年続けて減っています。
払う保険料は、額も率も増えました。会社の分も、一部はあなたの給料から出ている可能性が高い。
パートの社会保険は、これから会社の人数の条件が下がっていきます。
そして、わたしの提案は、一家にひとつ、合同会社です。
労使折半、あなたの明細はどう見えますか。コメントで教えてください。
【テロップ】上がったが実質は減/払う額も率も増えた/明細を見てみる
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